崑崙は空中に浮いた岩々から成る。よってここにいる動物は通常、翼をもつ鳥や妖怪の類しかない。ところがその日、ランニング中の天化が発見
したのは、雲霞の露に濡れて震える一匹の猫だった。
「鳥に連れ去られてくることは稀にあるんだ」
そう言って猫をあやす師父の手付きに、褐色の毛に黒い斑紋を纏った子猫はすっかりとろけている。自分が助けてやったのに、と恨めしく見ている
と、師父が「頭を撫でてごらん」という。額に、何か硬い出っ張りがあった。
「ただの猫ではないね。霊獣かな?よく見つけたな、お手柄だぞ」
先ほどまで拗ねていた心が、急に晴れやかになった。