「それ、何さ?」
天化がランニングから戻ると、道徳が庭仕事をしていた。紫色の毬に似た花が足元で咲いている。
「あじさい、って言ってね。公主がくれたんだ」
時折、道徳は会合と称して、一人で他の洞府へ遊びに行く。太乙や雲中子といった馴染みの友人の所でもどうかと思うのに、美人と名高い竜吉公主の名前が出てきたことで、天化は少し腹を立てた。
「土によって花の色が変わるらしい。雲中子に聞いて、俺ももらってきたんだ。ここなら何色に咲くだろうって」
「……まるでコーチみたいさ」
俺っちとの修行ほっぽいて、移り気にあっちこっち。道徳は目を丸くしたあと、くしゃりと笑って天化を撫でた。
「悪かった、明日は一緒に剣の稽古しようか」
そう言われても、天化はちっとも嬉しくなかった。